アメリカでガスコンロ規制についての議論が紛糾している。白熱電球は7月で終わり。家電製品の規制は時代の変化なのか、禁酒法的なやりすぎ規制なのか、という話

電球イメージ Uncategorized

事実関係

140年もの間、人々に使用されてきた白熱電球が
2023年7月いっぱいで、本当に「消灯」されることになった。

白熱電球は、
発明家トーマス・エジソンが発明し
現代にまで受け継がれてきた。

様々なエネルギー効率の良い照明が出てきたが、
白熱電球は延命してきた。

しかし、2023年8月1日(火)付で、
アメリカのエネルギー省は、
電球のエネルギー効率規制を実施する。
これにより事実上、
エネルギー効率の悪い白熱電球の販売が禁止される。

消費者はLED電球のような、
代替品を購入することになる。

関係者の話

業界団体『家電標準規格』の事務局長アンドリュー・デラスキー氏

「白熱電球はこれで終わりです」

『市場ソリューション同盟』のアレックス・フリント氏

「電球の新しい規制は、
国家によって、様々な規制が拡大していく状況に対する、
抵抗の象徴となっていました。

しかし、良い製品が生まれたり、
消費者の嗜好が
省エネや環境対策を求める方向に
変化していることに、家電メーカーが気付き始めたのです。
これで政治的な議論は複雑なものとなりました」

パット・ファロン下院議員

「2023年8月1日から施行される白熱電球規制は、
バイデン政権による規制強化の潮流が
次々とアメリカの家庭に押し寄せる最初の一例に過ぎません」
(ニュースメディア「ポリティコ」に寄せた声明)

『アメリカ照明協会』の公共政策担当副会長マイケル・ウィームス氏

「規制に、技術が追いつきました。
私たちは、エジソンの発明を100年以上も守り続けてきました。
しかし、照明業界はもうそういう段階ではありません。
私たちはテクノロジー業界です。
私たちは研究と開発設計に集中します」

特記:規制論争の歴史的な背景

家庭用白熱電球の段階的廃止は、
市場の変化を後押しする、アメリカ政府の政策によるものだ。

しかし、その「段階的廃止」は長期間かかった。

白熱電球の段階的廃止をめぐって
ワシントン内で、政治的・文化的な文脈の論争があったからだ。

論争の開始時期は、
ジョージ・W・ブッシュ政権にまでさかのぼる。

年月が過ぎた現在、
白熱電球の規制に関する議論はすでに終わり、
2023年の議員たちの論争は、
ガスコンロ規制などの
その他の家電に移行している。

※ガスコンロはアメリカエネルギー省による
 エネルギー効率化目標の、規制対象に挙がっている。

しかし10年以上前、
この白熱電球問題は、
「民主党は消費者の購買選択肢を狭めようとしている」
と非難する保守派や、
共和党の大統領選候補者たちの間で
よく話題になっていた。

その後、オバマ政権は、
電球の規制要件を最終決定した。

しかし、トランプ政権は、
「良い電球は自分をオレンジ色に見せる」と言い、
オバマ政権が行ってきた白熱電球規制の動きを止めた。

LED電球のために、
大金を投じて準備していた大手電球メーカーを
困惑させることにもなった。

そして2022年、
エネルギー省は、バイデン大統領が
エネルギー効率政策に重点を置いたことを受け、
白熱電球規制案を最後まで押し通した。

2022年4月、エネルギー省は
白熱電球規制の一部を施行し始めた。
規制の完全な施行は
2023年8月1日からの開始になる予定だ。

特記:近年の動き

メーカーや小売業者は
新基準に準拠するための柔軟性を示し始めた。

メーカーや小売業者の
協力が得られると考えたエネルギー省は、
エネルギー効率の悪い白熱電球から、
エネルギー効率の良いLED電球への
移行施策案の制定を1年以上前から進め、
2023年8月1日からの完全実施へとこぎつけた。

規制議論の論調の変化

擁護派と反対派の討論を見ていた人たちは、
省エネをめぐる騒動の変化を指摘した。

『省エネ同盟』の元シニア・ポリシー・ディレクターであるエリザベス・テイト氏は、
「11年前、省エネ問題は議論が白熱していました。
しかし、規制が施行される現在、
省エネ問題を取り巻く雰囲気は、
11年前より冷めています」と語った。

特記:その他の家電をめぐる、エネルギー効率規制の動き

電球をめぐる争いは決着がついた。
しかし、エネルギー効率基準をめぐる大きな争いはまだ続いている。
ここ数カ月、共和党の議員たちは、
ストーブ、洗濯機、食器洗い機などに関する、
バイデン政権とエネルギー省の
エネルギー効率化案に対し、
絶えず何らかの指摘をしてきた。

例えば、
エネルギー省は、
電気コンロ、オーブン、ガスコンロも対象とする
エネルギー効率規制案を提案している。

擁護派は、
「この規則は家庭のガス代を節約し、
温室効果ガス汚染源を減少させる」と言う。

一方で批評家は、
「提案された規制案の基準では、
現在市場に出回っているガスコンロの
半分しか、基準を満たせない」
と指摘する。

特記:2022年の電球規制案の詳細(エネルギー省の発表ベース)

2022年、バイデン政権とエネルギー省は、
市場に出回っているほとんどのハロゲン電球と白熱電球を
段階的に廃止するエネルギー効率規制案を完成させた。
以下にその概要を示す。

①さらに厳しくなる規制

規制案では、
「電球は1ワットあたり
45ルーメン以上の明るさを出さなければならない」
と定めている。
これは2007年にアメリカ議会が出した規制案に沿っている。
(ルーメンは電球の明るさを表し、ワットは消費電力を表す)

一般的な白熱電球は、1ワットあたり約13ルーメンだ。

エネルギー省によれば、この規制により、
米国の消費者は
年間光熱費を30億ドル近く節約できる。
地球温暖化につながる二酸化炭素排出量も
30年間で2億2200万トン削減できる。
これは2800万世帯が1年間に排出する量に相当するという。

エネルギー省はまた、
電球の最低効率を1ワットあたり45ルーメンから
1ワットあたり120ルーメント以上に引き上げ、
LED電球への移行を早める規則案を
2022年12月に提案した。

②エネルギー省による行政罰

エネルギー省は、
「新規制に違反する製品を故意に販売したメーカー・小売店に対し、
最大限の行政罰を科す意向である」と述べた。

エネルギー省はこれまでにも、
省エネ基準に違反した企業に対し、数万ドル相当の行政罰を科している。

通常、エネルギー省が規制するのは
製品の「販売」ではなく「製造」である、ということを考えれば、
この基準は「異例」だ、
と「家電標準規格」のアンドリュー・デラスキー事務局長は言う。

エネルギー効率規制案に対する評価

肯定的な評価

白熱灯からの段階的な移行は、
「市場力学」「技術の向上」「コストの低下」「政策支援」の
組み合わせによる成功例である、
と一部のエネルギー効率規制の賛同者は述べている。

より厳しい基準の施行は長期に渡って段階的に行われたため、
メーカーに「今のうちに、より効率的な製品への技術開発に投資すべきだ」
というシグナルが送られた。
そしてその間に、市や州も独自に照明のエネルギー効率基準を制定し始めた。

エネルギー情報局によれば、
2020年にほとんどの室内照明にLED電球を使用すると回答した家庭は、
2015年のわずか4%から47%に増加した。

バンダービルト大学ロースクールの教授で、
環境行動と気候変動に関する研究を行なっている
マイケル・ヴァンデンバーグ氏は
2023年初め、『ポリティコ』に対し、下記のように語っている。
「エネルギー効率規制は、
『経費削減』と『環境負荷の低減』につながれば、
一般大衆の支持を得られます。
従来の電球を
より効率的な技術に切り替えたことは、
政治的背景を超えた『偉大なサクセスストーリー』です。
もし今、LED電球を禁止しようとしたら、
人々は怒るでしょう」

2023年7月、
監視小委員会のコリ・ブッシュ委員(民主党)は、下記のように語った。
「家電のエネルギー効率化プログラムは、
消費者と企業にとって、
何十億ドルもの節約効果がありました。
より効率的なガスコンロ、洗濯機、食器洗い機、電球によって、
家庭や企業は何十年もの間、恩恵を受けています」

否定的な評価

共和党議員たちは、
「家電製品のエネルギー効率規制は、
照明や洗濯機、衣類乾燥機、冷蔵庫などの家電製品について
消費者の選択を制限しようしている。
アメリカ政府によって課せられる、消費者への大きな負担だ」
と主張している。

エネルギー政策・規制問題小委員会の委員長を務めるファロン氏は、
「エネルギー省は、家庭の中を
家電製品のエネルギー効率規制だらけにしようとしています。
LED電球への無謀な移行を含めたこれらの規制は
アメリカ人の生活コストの上昇と、選択肢の減少をもらたらすでしょう」
と主張した。

下院の共和党は最近、
エネルギー省が提案したガスコンロのエネルギー効率規制を
阻止する法案を可決した。
この法案は民主党の支持も得た。

2023年7月に行われた、
バイデン政権による家電製品への
エネルギー効率規制に関する公聴会で、
共和党のスコット・ペリー下院議員はこう語っている。
「エネルギー省が私たち全員に対し、
確実にお金を節約できるようにしてくれるのは喜ばしいことです。
なぜなら私たちは愚かすぎて、
自分たちで節約する方法が分からないからです」

特記:省エネ論争はさらに激しく、広範囲になるだろうという予測

アメリカが化石燃料から脱却するにつれて、
今後もこのような争いが起こるだろう、
と予測する人もいる。

『市場ソリューション同盟』のアレックス・フリント氏は言う。
「電球やストーブをめぐるこのような議論は、
エネルギー経済の変化として続いていくでしょう。

どのような発電所を建設するかというスケールでも起こるでしょう。

エネルギー経済のあらゆる側面に変化が訪れるとき、
その過程でこのような戦いが起こるのでしょう」

引用:https://www.yahoo.com/news/old-traditional-light-bulb-going-083000979.html

ブログ主の雑感

日本でもちょっと前に小池都政の政策として、
照明のLED化への推進を補助付きでやってましたね。

やらないよりはいいんだと思います。
ただ、知っておいた方がいいことは、エネルギー効率に関して、
「光」とか「音」っていうのは大してエネルギーを食わないってことです。

私はメーカーの開発者で、電子回路の技術者なので、
電気を食わないような製品をどう作るか、
なんて考えるのが日常です。

一応、専門家の端くれとして書きます。

「光」とか「音」ってわかりやすく目立つじゃないですか。
だから相当電気使ってるんだろうなーって多くの人が思いがちです。

でも本当に電気を(つまりエネルギーを)食うのって、
「温度を変化させること」なんですよ。

それに比べれば「光」とか「音」なんて微々たるものです。

家の中だけ考えても、だいたいブレーカーが落ちちゃうのって
「エアコン」「電子レンジ」「ドライヤー」なんかを使ったときだったりします。
すべて、温度を変化させるための機器です。
電子レンジやドライヤーなんかは短時間しか使わないことが多いので
電気代とかで見えにくいだけです。

でもこれは家屋での話で、まだまだエネルギー消費としては序の口。
本当にエネルギーを食うのは
工場や倉庫なんかの「産業用途」で温度を変化させる場合です。

巨大な冷蔵庫や冷凍庫、特に冷凍庫は
家庭用よりも温度を低くしているものも少なくありません。

鉄工所で巨大な熱を発生させる、なんて場合も、
エネルギー源は電気じゃないかも知れませんが、同じようなものです。
電気で動いてるものも、その電気の元はなにがしかのエネルギー源です。

この「大きな温度変化に使う大量のエネルギー」を
どうにかしないと厳しいのかなーと思います。

あと、ソーラーパネルの発電量も微々たるもので
私の会社の営業さんや客先が「ぜひソーラーパネルでお願いします!」
とリクエストを出してくるのですが、
室内用パネルをノート何枚分も使って、LEDがうっすら光る、
というのを見せると落胆します。

屋内用屋外用の違いはあれど、ソーラーパネルの電力発生量に関して
多くの人の認識と実際の性能のあいだには
大きな隔たりがある、という状況もあります。

かと言ってエネルギーも問題はこのままでいいのかと言うと
そうでもないはずで、
エネルギー問題は難しいです。

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