事実関係
①これまでの経緯
2023年7月、
アメリカ教育省は、
「学生ローンの返済に関して事務的ミスがあり、
返済の計算方法を直した結果、
今後、約80万4000人のローン残高が
帳消しになることがわかりました」
と発表した。
画像引用:https://en.wikipedia.org/wiki/United_States_Secretary_of_Education
しかし、事務的ミスが原因のため、
本当に返済免除の資格を持つ人が
約80万4000人なのか、
また、金額が妥当なのかは不明だ。
以前、アメリカ政府の説明責任局は
「借り手の返済履歴を追跡することが
難しい状況になっている」
と発表していた。
②今回の訴訟
そこで、学生ローン返済免除政策に対する、反対訴訟が起きた。
原告の代理人である新自由市民権協会(NCLA)は
「アメリカ政府には返済を免除する権限がありません。
アメリカ政府は、この政策が
司法審査を通過できないことをわかっています。
だから、司法審査を逃れるために
スケジュールを前倒しして作業を進めているのです」
と主張している。
2023年8月14日(月)
ミシガン州連邦裁判所の判事は、
この訴訟を棄却した。
ジョージ・W・ブッシュ大統領が任命した
トーマス・L・ルディントン判事は、
「原告は、この政策によって
特に何の損害も受けていない」
と、棄却理由を述べた。
画像引用:https://www.sandiego.edu/news/detail.php?_focus=89341
③返済免除の執行
ミシガン州連邦裁判所の判事によって
訴状が却下された直後、
アメリカ教育省は以下のように発表した。
「学生ローンの借り手の一部に対して、
ローン残高の返済免除を開始します。
アメリカすべての州の人々が対象です」
特記①:免除される債務残高
問題となっている学生ローンの免除対象の債務残高は
合計で約390億ドル相当(約5兆6748億円)となる。
これは学生ローンの債務者が、
20年から25年の返済後の債務残高を
80万4000人分合算した額である。
特記②:訴訟について
今回の訴訟は
保守派であるケイトー研究所とマッキナックセンターの訴えを、
彼らの代理人として新自由市民権協会(NCLA)が
ミシガン州の連邦裁判所に提出したものとなる。
特記③:債務者による返済履歴の証明は難しい
役所の事務的ミスのために
これまでの返済履歴が消失したり混乱したりしてしまった。
債務者は返済履歴を役所に証明する必要があるが
現状では多くの債務者にとって、難しい証明となる。
学生ローンを借りている人の返済選択肢には、
「収入に応じた支払いプランへの加入」がある。
しかし、そのような返済プランを利用した人の中にも、
これまでの返済額を
すべて証明してもらうことに苦労している人もいる。
また、返済免除資格のある人の中には、
返済プランには加入せずに
返済を続けた人も多くいる。
返済免除の対象となる人には、
「ダイレクト・ローン」または
「連邦家族教育ローン」の借り手が含まれる。
従って、借り手の多くは50歳以上であろうと推測できる。
返済免除資格のない人も含めると、
約920万人がこのカテゴリーに入る。
特記④:アメリカ政府による返済履歴の「調整」
2022年4月、
バイデン政権は
「学生ローンの借り手が、
返済において信用できること確認するため、
借り手の返済履歴を『調整』します」
と発表した。
要は、完全な事実を取り戻すのは不可能だから
推測で返済履歴を作り上げていって、
それを元に判断しますと。
関係者の話
ミゲル・カルドナ教育長官
画像引用:https://en.wikipedia.org/wiki/Miguel_Cardona
「バイデン-ハリス政権は、
何十年にもわたる返済によって
当然得られるはずの免除を受けられなかった
80万4000人の借り手の
ローン返済免除を開始します。
過去の管理上の失敗によって、
返済免除への進展はありませんでした。
しかし、バイデン-ハリス・チームは
不断の努力で是正してきました」
新自由市民権協会(NCLA)のSheng Li氏(訴訟代理人)
画像引用:https://nclalegal.org/team/
「裁判所はこの訴訟自体の是非については
判決を下していません。
さらに裁判所は
『原告のケイトー研究所とマッキナックセンターは
訴訟を起こせる当事者ではない』
と述べています。
当協会は『原告が当事者ではない』という
裁判所の結論に同意しません。
クライアントとともに、別の法的選択肢も検討しています」
記事引用:https://www.yahoo.com/news/lawsuit-block-student-loan-debt-214005400.html
ブログ主の雑感
これもまた難しい・・・。
日本でも年金で、これと似てる問題がありました。
役所がいい加減な仕事をして、国中が大混乱になるという。
アメリカの学生ローンの場合、
返し終わったはずの人が返し続けたってことですよね。
そんなことはあっていいはずがなく、
すぐにでもなんとかしないといけない。
その返済しなくていいお金は
苦しい思いをして働いて手に入れた
かけがえのないお金のはず。
だけど、誰が、いつ、どのくらい返済して、誰がまだなのか、
という記録がもうめちゃくちゃで、
どうすればいいのか。
そこでアメリカ政府が取った方法は、
もうだいたいでいいや、多少間違えててもいいや、
本来、返済が終わってる人が支払い続ける方が大問題、
まずこれをなんとかする!
ってことなんだと思います。
もちろん、このアバウト政策のために、
本来免除されない人が免除されたり、
本来免除される人が払い続けたり、
ということが、少数の割合だったとしても、
あるように思います。
しかし、だいたいでいい、とりあえずやる、
というのも一つのやり方であるとは思います。
完璧でないならやらない、では誰も救われない。
一方、「だいたい」で救われなかった人をどうするか、
また、実際よりも多くの予算を使ってしまった、
など、問題は確実に残ります。
特に予算の問題は、金額が大きければ大きいほど
「その使い道」に納得がいかない人が
出てくるというのもわかります。
やはり難しい問題です。
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